堤先生の食育コラム 堤先生の食育コラム

子どもの食に詳しい相模女子大学の堤先生に、子どもたちの食事について聞いてみました!
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よく噛んで食べることは、なぜ大切なのでしょうか

 お子さまに声掛けするときの「よく噛んで食べること」がなぜ大切なのかの理由や、よく噛んで食べるためにはどのような工夫が必要か相模女子大学の堤先生に聞いてみました。

 お子さまに「よく噛んで食べてね」と声掛けをすることがあります。よく噛んで食べることが大切、ということは知っていても、その理由についてご存知の方は意外に少ないかもしれません。そこで、よく噛むことで得られる効果の主なものを以下に3つ挙げていきます。

  • よく噛むと唾液が沢山分泌され、消化を助けたり、虫歯や歯周病の予防に役だちます。
  • よく噛むと口の周辺の筋肉や骨が強くなり、顎の発達を促したり、顔の表情が豊かになったりします。
  • 噛む刺激が脳に伝わり、脳の活動を促進します。また、早食いを防止して満腹感が得られやすくなり、肥満予防につながります。早食いでは、脳が満腹を感じるまでに食べ過ぎてしまうからです。

 次に、よく噛んで食べるためには、どのような工夫が必要でしょうか。まず、食事に集中できる環境を整えることです。テレビを見ながら、おもちゃで遊びながらでは、食事や噛むことに集中することは難しいです。家族や友だちと一緒に楽しく、ゆったりと食事に集中できるようにします。

 食事の内容では、軟らかいもの、食べやすいものばかりでは、噛む回数は増えません。そこで、噛みごたえのある固かったり弾力性がある食材の使用が勧められます。具体的には、穀類(玄米、全粒粉など未精製のもの)、野菜類(ごぼう、たけのこなど)、きのこ類(しいたけ、しめじ、えのきなど)、豆類(大豆、小豆、ひよこ豆など)です。

 また、似たような食品や料理でも、噛む回数は違ってきます。例えば、主食としてご飯やパンに比べて、汁気があり、表面がつるつるしていてなめらかなうどんやパスタの方が噛む回数は少なくなります。パンも固いフランスパン、もっちりとしたベーグル、耳なしの食パンの順に噛む回数は少なくなります。お菓子なども同様で、油脂を使っていない固焼きせんべいに比べて、バターなどの油脂の多いサクサクとしたソフトクッキーの方が噛む回数は少なくなります。

 食事に集中できる環境を整えて、食材の特徴を考慮することで、よく噛む習慣を身につけられるといいですね。

肩書・プロフィール
堤先生
相模女子大学 栄養科学部健康栄養学科 特任教授
◎日本女子大学家政学部食物学科卒業、同大学大学院家政学研究科修士課程修了。
◎東京大学大学院医学系研究科保健学専門課程修士・博士課程修了。
◎保健学博士、管理栄養士。青葉学園短期大学専任講師・助教授。
◎日本子ども家庭総合研究所母子保健研究部栄養担当部長。
◎相模女子大学栄養科学部健康栄養学科教授を経て、2024年4月より現職。

 専門は母子栄養学、保健栄養学。「授乳・離乳の支援ガイド」(2019年改定版)策定委員。