堤先生の食育コラム 堤先生の食育コラム

子どもの食に詳しい相模女子大学の堤先生に、子どもたちの食事について聞いてみました!
5

子どもたちに野菜にチャレンジしてもらうための工夫

お子さまの野菜嫌いにお困りの方も多いのではないでしょうか。今回のコラムでは、そんな野菜についてチャレンジしてもらうための工夫やポイントについて相模女子大学の堤先生に聞いてみました。

1

野菜が苦手な子どもが多い理由と調理の工夫

 味を構成する要素は「甘味」「塩味」「酸味」「苦味」「うまみ」の5つがあり、「甘味」「塩味」「うまみ」はそれぞれエネルギー源の糖質、からだの調子を整えるミネラル、からだを構成するたんぱく質です。これらは私たちが生きるために必要なものの味です。そのため子どもはこれらの味を本能的に好みます。一方「酸味」や「苦味」は古かったり、腐敗しいてる物や毒を表す味として、子どもは本能的に避ける味と言われています。野菜以外の食べ物にも言えますが、見た目、色、においや食感も、好き嫌いの原因になることがあります。

 そこで、子どもが野菜を好んで食べるようにするには、例えば、苦味を感じすやいピーマンは、カレーやシチューなど、味がしっかりついていたり、とろみがある料理に入れると意外に食べるものです。また、しいたけは笠のひだの部分にハンバーグの種を詰めて焼けば、大好きな肉のうまみをしいたけが吸って、箸が進むこともあります。


2

子どもに野菜を好きになってもらうための働きかけ

 調理の工夫以外に、子どもに野菜を好きになってもらうには、以下の方法もおすすめです。

  • ❶野菜を身近に感じさせること
    買い物をする時、子どもが苦手な野菜、例えばトマトをかごに入れてもらいます。食事の時に、「〇〇ちゃんが選んでくれたトマトよ」と言って提供すると、身近に感じて食べることもあります。
  • ❷大げさにほるめこと
    「一口しか食べなかった」と否定的に捉えるのではなく、「すごい!一口食べられたね」と肯定的に捉えて、ほめることを習慣化することです。子どもは食べられたことを褒められると自信がつき、それが自己肯定感の育ちにもつながっていきます。
  • ❸家族が言葉かけに気をつけること
    子どもの食が進まないと「それ嫌いなの?」などの言葉かけで、子どもは「これは嫌い」と認識してしまうこともあるので、「嫌い」と決めつけるような言葉かけは避けます。家族が「おいしいね」と笑顔で言いながら、子どもの苦手なものを食べているのを見せることを続けていると、意外につられて食べるようになるかもしれません。
     なお、「今日はこれが食べたい」と大人が思うように、子どもにも「今日食べたいもの」があるものです。成長に伴い「今日食べたいもの」も変化していくことが多いです。そこで、「そのうち食べられようになるかもしれない」とおおらかに見守り、楽しい雰囲気で食事をすることが大切です。
肩書・プロフィール
堤先生
相模女子大学 栄養科学部健康栄養学科 特任教授
◎日本女子大学家政学部食物学科卒業、同大学大学院家政学研究科修士課程修了。
◎東京大学大学院医学系研究科保健学専門課程修士・博士課程修了。
◎保健学博士、管理栄養士。青葉学園短期大学専任講師・助教授。
◎日本子ども家庭総合研究所母子保健研究部栄養担当部長。
◎相模女子大学栄養科学部健康栄養学科教授を経て、2024年4月より現職。

 専門は母子栄養学、保健栄養学。「授乳・離乳の支援ガイド」(2019年改定版)策定委員。